日本語学会大会発表賞
lastupdate 2024/8/9

 

 
2024年度日本語学会春季大会発表賞

 

 2024年度春季大会(2024年6月1日・2日,東京外国語大学)の研究発表の中から,以下の発表が選考されました(2024年8月授賞決定)。

 

柄田千尋氏
「キリシタン資料のタ行二重子音表記―バレト写本を中心に―」

 

〔授賞理由〕
 本発表は,キリシタン資料のバレト写本においてなぜ「タ行二重子音表記」(タ行直音の子音を2つのtで表す表記)が見られるのかを問題とし,ラテン語・ポルトガル語の文字配列に影響されたという解釈を提出するものである。再検討すべき部分は若干残るものの,研究の着眼点と実証的な論の積み上げは高く評価される。本発表は,音韻だけでなく,表記にも母語の干渉があることを指摘する点で,音声・音韻史に関わるキリシタン資料の資料論的研究として重要な位置づけができるものと言える。

 

(2024年8月9日掲載)

 

2023年度日本語学会春季大会発表賞

 

 2023年度春季大会(2023年5月20日・21日,青山学院大学)の研究発表の中から,以下の発表が選考されました(2023年6月授賞決定)。

 

加順咲帆氏
「配慮の言語行動における地域的志向―話者の内省を手掛かりに―」

 

〔授賞理由〕

 配慮の言語行動の地域差の研究には,観察上の主観性が排除できないという難点がある。そこで,本発表は比較対象となる地域の話者にもう一方の標準語訳の会話を見せ,その「違和感」などの反応を記録するという研究手法を提案する。比較対象とする地域の言語行動に対する「違和感」を手がかりにして言語行動の規範をあぶり出そうとする調査方法は,ユニークなものとして高く評価できる。
 本発表で具体的に比較されたのは,気仙沼市と大阪市の話者における「心的接近」「表現操作」の「過剰」「不足」という「違和感」である。調査では,種類は異なるものの「心的接近」による配慮については,気仙沼話者の方がより積極的に志向する傾向があること,「表現操作」による配慮については,大阪話者の方が積極的な志向を持つこと,などの興味深い指摘がなされている。比較対象となる地域の会話のみが取り上げられ,話者が自分の地域の会話をどう評価するかが明らかでないなど,調査上の課題は残すが,将来の発展が期待され,授賞に値する研究発表と言える。

 

(2023年6月21日掲載)

 

2022年度日本語学会秋季大会発表賞

 

 2022年度秋季大会(2022年10月29日・30日,オンライン)の研究発表の中から,以下の発表が選考されました(2022年11月授賞決定)。

 

小原真佳氏
「語順変更から見た中世のゾの係り結び」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,中古から中世にかけて生じたゾによる係り結びの変化について考究するものである。ゾの前接要素と生起位置に焦点を当てて,調査,分析が行われている。調査データから,焦点化の形骸化,語順変更の不履行,ゾの挿入位置の一定化という特徴を取り出し,「中古においてゾは格成分につきやすいが,中世ではその割合が減少し,副詞的修飾成分につきやすい」「中世において述部直前以外の位置にゾが生起する例は,副助詞,数量詞など排他性を持つ要素への承接に偏る」など,これまで知られていなかった事実を指摘した。発表の仕方については,内容,構成ともにわかりやすく,聞き手によく伝わるよう工夫がなされていた。質疑への応じ方も的確であった。
 本研究は,係り結びの衰退過程を具体的に示した点に新規性があり,文法史研究の進展に貢献するものである。

 

(2022年11月22日掲載)

2022年度日本語学会春季大会発表賞

 

 2022年度春季大会(2022年5月14日・15日,オンライン)の研究発表の中から,以下の発表が選考されました(2022年6月授賞決定)。

 

王竣磊氏
「『唐話纂要』の仮名音注にみるハ行子音について」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,近世期の唐話教科書である『唐話纂要』の漢字の仮名音注を観察することによって,日本語のハ行子音について考察するものであり,唐話資料の仮名音注を,長崎方言を明らかにするための新たな資料とする観点を拓いた研究である。
 先行研究において資料調査が不十分であった『唐話纂要』のハ行音表記が,杭州音の F 型字/HU 型字/H 型字の三項に対応していることに着目し,ハ・ホの子音は音素レベルで広い異音の幅を持っており,発音継続時間と表記に関連があるとした点に特徴がある。
 資料解析の方法は堅実・精密で説得力があり,当該資料の活用が長崎方言を明らかにする上で有用であることを示し得ている。ハ行子音の史的研究に留まらない発展性を持つと判断される。発表はわかりやすく,質疑応答も適切であった。

 

(2022年7月19日掲載)

2021年度日本語学会秋季大会発表賞

 

 2021年度秋季大会(2021年10月30日・31日,オンライン)の研究発表の中から,以下の発表が選考されました(2021年11月授賞決定)。

 

李二維氏
「「場合」の文末用法――「~場合ではない」をめぐって――」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,名詞「場合」の文末用法のひとつである「~場合ではない」を取り上げて使用実態を明らかにし,様々な角度から分析を行ったものである。まず,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)で使用状況を調査し,「場合」の前接形態として動詞テイル形が定着している事実を指摘する。それに加えて,「今」との親和性を有し,スル形との置き換えがしにくい点から,この表現が,発話時現場の状況を焦点とするものであることを明らかにする。「~テイル場合ではない」は,「今はのんびりお風呂に入っている場合ではない」のように話し手のマイナス評価を表すことが多い。このような評価的意味は,現実事態が(話し手の)理想事態とは異なる不適切なものであることに起因すると述べる。さらに,この考え方を応用して類似表現「べきではない」との比較を行い,「「~場合ではない」の価値判断が個人的な基準によるのに対して,「べきではない」では社会通念に基づき,現実事態と理想事態の分離・並立がない」という相違点を捉えている。「時ではない」との比較では,中国語,韓国語に「~場合ではない」に相当する表現がないことを指摘するなど対照研究的な知見もある。以上の考究をふまえ,「~場合ではない」を評価のモダリティ形式に位置づけ,体系的研究への方向性を示している。
 本発表は,条件表現の周辺的形式として扱われてきた名詞「場合」の文末用法に初めて正面から光を当てたものであり着眼点が興味深い。当為表現の記述の質を高める有意義な研究であり,論述の仕方,質疑応答も明快であった。実質名詞「場合」との境界をどう捉えるか,「スル場合ではない」など少数例の説明については今後の課題であるが,それらの検討も含めて,さらなる研究の発展が期待できる。
 以上により,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

(2021年11月26日掲載)

2021年度日本語学会春季大会発表賞

 

 2021年度春季大会(2021年5月15日・16日,オンライン)の研究発表の中から,以下の発表が選考されました(2021年5月授賞決定)。

 

末吉勇貴氏
「トキ節を用いた複文におけるテンス表現の歴史的変遷――中古から中世末期資料の比較を通して――」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,トキ節を用いた複文を対象に,中古から中世末期の資料を比較することによって,発話時を基準としてトキ節のテンスを決定する古典語の絶対テンスの体系が,主節時を基準としてトキ節のテンスを決定する現代語の相対テンスの体系に変化した時期を明らかにすることを試みたものである。古典語の体系が現代語の体系に変化するためには,①従属節と母胎節(トキ節の係り先。黒木邦彦による)の間で異なるテンス選択が許容されること,②従属節と母胎節が同じテンスであるとき,トキ節が非過去の場合にはトキ節の事態が母胎節の事態に先行する事例が,トキ節が過去の場合には母胎節の事態がトキ節の事態に先行する事例が見出されなくなること,の2点が必要な条件であるとして,各時代の資料に見られる事例に詳細な分析を加えている。その結果,「絶対テンスの体系は中世末期を境に相対テンスの体系へと変化していった」と結論づけている。また,この変化の背景には古典語の「タリ」が「タ」としてテンス化したことがあり,その動機として阪倉篤義が指摘する古典語の「開いた構造」から近代の「閉じた構造」への変遷ということがあること,これは矢島正浩が指摘する同時期の条件表現と平行する事象であること,などが指摘されている。研究目的は明確であり,分析の手続きも明示的に説明されている。論の構成や展開も明快で,結論を効果的に伝える工夫もなされている。また,広い視点から当該事象を捉える問題意識も提示され,今後のさらなる研究の発展が期待される。
 以上により,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

(2021年05月31日掲載)

2020年度日本語学会秋季大会発表賞

 

 2020年度秋季大会(2020年10月24日・25日,オンライン)の研究発表の中から,以下の発表が選考されました(2020年11月授賞決定)。

 

井上直美氏
「「~てナンボ」の構文パターンと意味機能」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,近畿方言を出自とし,メディアで触れることの多い「~てナンボ」という形式を対象に,コーパスによる実例調査を行い,その構文パターンと意味機能を探索型アプローチによって分析したものである。「~てナンボ」は,日本語学習者が接触することが多いものの,自力で理解するのがむずかしい表現である。本発表では,ニア・ネイティブレベルを目指す日本語学習者のための記述ということを視野に入れ,当該形式を,①その前接語,②後続形式,③主題をマークする表現の有無,④表記(カタカナ・ひらがな等),⑤文体(方言主体か否か),⑥括弧類使用の有無など,多角的な観点から詳細に分析している。分析においては,「~てナンボ」のスキーマ的意味を「~ことによって価値が発生する」と規定し,(a)「ナンボ」を「いくら」で置き換えられるA型(「副詞型」;金銭型)と,置き換えられないB型(「機能語型」)にまず2分する。続いて,(b)B型を,「Xは~てナンボ」のような名詞句Xを持つB1型と,それを持たないB2型(主義型)に,(c)さらにB1型を,名詞句Xと「~てナンボ」の前接語に格関係が復元できるB1a型(意義型)と,それができないB1b型(重視型)に分け,これらの構文パターンが「~てナンボ」の意味機能のタイプとその拡張過程を明らかにするのに有効であるとして,構文パターンごとにその担う意味機能に分析を加えている。その他,当該形式は,方言主体でない文章でも広く用いられていること,「ナンボ」の表記はカタカナが多いこと,「~てナンボ」は括弧類でマークされることが多いこと,これらがあわさって「~てナンボ」の機能語性を表示していることなど,総合的な視点からの考察も施されている。研究目的は明確であり,分析も手堅くまた丁寧である。論の構成や展開も明快で,結論にも説得力がある。発表の仕方や質疑に対する応答もわかりやすく,応答のなかには今後の発展の方向を示すものもあった。
 以上により,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

(2020年11月17日掲載)

2020年度日本語学会春季大会発表賞

 

 2020年度春季大会の研究発表の中から,以下の2件が選考されました(2020年6月授賞決定)。今回は大会が中止になったため,審査は予稿によって行いました。

 

池田尋斗氏
「「好きだ」の対象を示すヲ格と情報構造――ノダ文に着目して――」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,対象を示すのに格助詞ガもしくはヲを用いる「好きだ」構文について,ガとヲの選択の要因を,対象語が焦点に含まれるか否かという情報構造の観点から,BCCWJの用例を対象に分析したものである。「好きだ」構文がガとヲのいずれを用いるかは,これまで,対象の個別性や,文構造(主節か従属節か)などの観点から論じられてきたが,本発表では大江(1973)が願望表現のガ/ヲ交替を分析するのに採用した情報構造に注目する。ガが総記(焦点化)の機能を持つことから,「「好きだ」構文では,対象語が焦点から外れる環境においてヲの容認度が上がる」という仮説を立て,情報構造の関与の有無を網羅的に分析するために,情報構造が把握しやすいスコープのノダ文を分析の対象に据えることによって,その仮説が成り立つことを明らかにしている。研究目的は明確であり,スコープのノダ文を分析するという着眼点もよい。論の構成や展開も明快で,結論にも説得力がある。先行研究で指摘されている他のガとヲの選択要因の影響の可能性を排除するために用例を絞り込むとともに,焦点の認定方法を厳格化するなど,採用した分析方法も高く評価できる。情報構造以外の観点でガとヲの違いを説明している先行研究との関係を課題とするなど,今後の研究への展望も示されている。
 以上により,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

田中草大氏
「変体漢文の構文論的研究――受身文の旧主語表示を例に――」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,中国語文式に表記した日本語文である変体漢文が,中国語文式に書く際に構文面に受ける様々な制約とそれに対して採っている対処の方法を,受身文の旧主語の表示のしかたを例にして分析したものである。分析の結果,古典語では「ニ」で表示されることの多い受身文の旧主語は,変体漢文では,①「ニ」による表示が発達しておらず,「ノタメニ」が担っていること,②元来「ノタメニ」自体には被害のニュアンスはないが,変体漢文で書かれた実務的文章で使用されるという内容上の特徴によって被害のニュアンスが醸成されていったこと,③関連して,被害的でない場合には「~ノ…スルトコロ」といった代用形式が使用されたこと,などを明らかにしている。また,結論として,受身文の旧主語表示に観察される,構文面の制約に対する対処法として,変体漢文では,④和文ほどには受身文を使用しないこと,⑤中国語式表記で表記可能な「ノタメニ」「~ノ…スルトコロ」を活用すること,という2点を指摘している。問題設定や分析方法は妥当であり,個々の用例も丁寧に分析され,実態が堅実に把握されている点,高く評価できる。変体漢文にとっての標準と非標準を把握すること,変体漢文の語法と文体形成・文体変化の関係を追究することなど,今後の研究への展望も明確に述べられている。
 以上により,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

(2020年07月09日掲載)

2019年度日本語学会秋季大会発表賞

 

 2019年度秋季大会(2019年10月26日・27日,東北大学)の研究発表の中から,以下の発表が選考されました(2019年11月授賞決定)。

 

小原雄次郎氏
「全国資料を用いた終助詞「モノ類」の地理的分布―藤原与一の調査と方言談話資料『ふるさとことば集成』との対照から―」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,終助詞「モノ類」について,藤原与一『方言文末詞〈文末助詞〉の研究(下)』の記述と『全国方言談話データベース 日本のふるさとことば集成』のデータを突き合わせ,その全国的な地理的分布状況を明らかにしたものである。首都圏では「モン」が少なく「モノ」が多用されること,形態が撥音化した九州地方の「モン」・東北地方の「オン」やそれがさらに短縮化した「モ・オ」などには他の終助詞が後接することが多いこと,などが指摘されている。本発表は同時に,「モノ類」の分析を踏まえ,藤原の著書に含まれる多様な地域・多様な表現領域のデータと,地点ごとの定量化が可能な後者の談話データを補完的に活用することのメリットを主張する,データの効果的な活用方法を追究した基礎的な研究でもある。方言研究ではこれまで,多くの(談話)データが蓄積されてきたが,有効に活用されているとは言いがたい。その一方で,各地の伝統的な方言は使用されなくなりつつあるという状況がある。本発表は,今後の方言研究が採るべき方法のひとつの方向性を示した点で高く評価できる。また,日本語学の他の分野にも影響を与え,それぞれの分野で蓄積されたデータを活用する同種の研究を促す潜在力もうかがわれる。発表のしかたも秀逸で,聴衆の理解を促す工夫が随所に施され,質問への応答も的確であった。
 以上により,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

(2019年11月30日掲載)

2019年度日本語学会春季大会発表賞

 

2019年度春季大会(2019年5月18日・19日,甲南大学)の研究発表の中から,以下の2件が選考されました(2019年6月授賞発表決定)。

 

呉慶霞氏「排他的限定を表す副詞の意味用法をめぐって」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,「ただ」「単に」「もっぱら」のように排他的限定を表す副詞の意味用法を考察したものである。このタイプの副詞には,否定文や疑問文にならない,名詞述語文では使われない,といった特徴があるが,その理由はこれまで十分に考察されてこなかった。
 本発表では,「ただ」に焦点を絞り,上記の問について考察している。「ただ」には,「他の特異な属性の不在」という基本義と,そこから派生した「属性の純粋さの強調」という2つの意味があるが,「ただ」によって他の属性の不在を述べた上で,当該の属性についても否定すると表現の存在意義がなくなるため,「ただ」を含む文は原則として否定や疑問にできないと説明される。また,後者の意味はスキャニングの結果生じると説明されている。
 これまで現象の指摘にとどまっていた対象について一定の掘り下げを行い,「ただ」に限定してではあるが妥当性の高い説明を提示した点は高く評価できる。特に,スキャニングという心的操作が「ただ」の意味の派生に深く関与していることを明らかにした点は,今後の研究の発展性を感じさせる。発表内容や発表資料は丁寧に整理され,分かりやすく示されていた。発表態度も落ち着いており,質問に対する応答も的確に行われていた。
 以上により,総合的にみて,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

中川奈津子氏,セリック・ケナン氏「琉球八重山白保方言のアクセント体系は三型であって,二型ではない」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,南琉球八重山白保方言のアクセント体系が,先行研究で論じられてきたような2型ではなく3型であることを示し,系統的に近い波照間方言のアクセント体系との歴史的な関係を論じたものである。先行研究が「下降型」とした語彙が下降の幅により2群に分けられるという本発表の主張は,臨地調査で得た発話データの音響分析にもとづくものであり,論の展開は明快かつ周到である。口頭発表の際に発表者が問題となる2つの語群の音声を再生して提示し,音調の違いが参加者にも明瞭に聞き取れたことで,主張の説得力が増した。歴史的な変遷についての議論でも,慎重でありながら妥当な見解が示されている。また,質疑応答は活発で,発表者の応答を通じて,発表者が白保方言の音韻体系全体に留意しつつ,この研究課題を扱っていることがうかがえた。今後の展望として,今回得られた知見が母音・子音の長短の弁別や文法的意味の区別に関わる可能性に言及しており,その方向での発展も期待できる。
 以上により,総合的にみて,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

(2019年6月17日掲載)

2018年度日本語学会秋季大会発表賞

 

2018年度秋季大会(2018年10月13日・14日,岐阜大学)の研究発表の中から,以下の1件が選考されました(2018年11月授賞発表決定)。

 

中村明裕氏「東丸神社所蔵の方言声点資料について」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,東丸神社所蔵の荷田春満(1669-1736)資料の中の,方言の語彙を声点付きで記録した3葉を調査し,その声点から当時の方言語彙のアクセントを次のように推定したものである。(1)上総方言は少なくとも,[○○,[○]○,[○]○○,[○○○○,[○○○○○ という音調型を有していた。(2)遠江方言は少なくとも,[○]○,[○○○,[○]○○ という音調型を有していた。(3)上総方言および遠江方言は,1拍目の前で上昇する {[○○…} という句音調を有していた。(4)遠江方言は,3 拍の形容詞に少なくとも [コスイ と [コ]スイ のような2つのアクセント型があり,アクセントの違いによるミニマルペアを有していた。
 上記の推定には,資料の声点がどのような音調を表しているかの考察が必要である。これについて,発表者は川上蓁(2009)の解釈に従い考察を進めているが,荷田春満の差した声点の音価を発表者自身が検証する必要があった。この手続きが欠けている点に不足を感じるが,僅少な例にとどまるとはいえ,近世前期のアクセント資料に乏しい東部方言のデータを紹介した点は高く評価できる。
 発表内容や発表資料は丁寧に整理されており,分かりやすく示されていた。発表態度も申し分なく,質問に対する応答も的確に行われていた。
 以上により,総合的にみて,本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

(2018年11月8日掲載)

2018年度日本語学会春季大会発表賞

 

2018年度春季大会(2018年5月19日・20日,明治大学)の研究発表の中から,以下の1件が選考されました(2018年6月授賞発表決定)。

 

山際彰氏「時を表す語における語義変化の方向性―サキザキを中心に―」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,日本語の時を表す語彙の中で,過去・未来を表す語彙の語義変化について「サキザキ」を中心に歴史的に考察したものである。サキザキの語義は近世までは過去が中心であったが,近代以降未来へと移行する。その変化の過程と要因を周辺語彙との体系の中で丁寧に解明しようとしている。時を表す語彙が過去か未来か,どちらか一方に偏る(両用されない)のは,文脈的に使い分けられるよりも,一意的に指示内容が決定される分析的傾向によって支えられていたからだとする説明には説得力がある。一方でこのような傾向や制約は日本語だけの特徴なのか,発表では現代中国語では過去と未来の両方を表し得る語彙があると指摘するが,日本語と同じ言語類型をなす朝鮮語ではどうなのか,波及する興味は尽きない。発表はプロジェクターを使用しなかったが,予稿集の内容とよく照応した分かりやすいもので,発表後の質疑に対しても丁寧に応えており,声の大きさ,スピード,明瞭さなど,学会プレゼンテーションに求められる水準からも申し分ない。発表者の今後の研究進展への期待に加え,若手会員の研究発表の見本として,「日本語学会大会発表賞」に相応しいものである。

 

(2018年6月24日掲載)

2017年度日本語学会秋季大会発表賞

 

2017年度秋季大会(2017年11月11日・12日,金沢大学)の研究発表の中から,以下の1件が選考されました(2017年12月授賞発表決定)。

 

大江元貴氏「「形容詞反復発話」の文法―「怖い怖い。」は「怖い。」と何が違うか―」

 

〔授賞理由〕

 本発表は、「6畳の部屋って結構広いよな。―いやいや、せまいせまい。」の「せまいせまい」など、発話における形容詞基本形を反復する形式の文法的ふるまいを分析したものである。形容詞の反復は、「長い長いトンネル」のように連体修飾語においては程度の強調で理解されるが、談話において単独で文を構成する場合には、程度副詞や終助詞と共起しないという統語的制約があり、程度性の強調では説明がつかない、という主張に本発表の新しさがある。発表では、わかりやすい例文による分析から、対話における形容詞反復発話は、提示された情報に対する即応的な反応と情報提示しようとする動機が話し手に強くある場合に観察されること、独話においては話し手が受ける情報の強烈さや体感度の高さがある場合に観察されることが示された。形容詞反復発話は独立文の性格が強く、対話のそれは、注意喚起や応答を意味する伝達的独立語文に、独話の形容詞反復発話は感動や驚きを意味する表出的独立語文に分類されるという結果が、説得力を持って導き出された。質疑応答は活発で、発表者はその一つ一つに丁寧に的確に対応していた。質疑の中で、イ落ち構文との対比の必要性や、方言的差異やイントネーションによる差異を分析すべきことが出されたのは、本研究の発展性が高いことの裏付けでもある。以上のことから、本発表を、日本語学会大会発表賞の授賞対象発表としてふさわしいものと判定した。

 

(2018年1月9日掲載)

2017年度日本語学会春季大会発表賞

 

2017年度春季大会(2017年5月13日・14日,関西大学)の研究発表を審査した結果,「該当者なし」となりました(2017年6月決定)。

2016年度日本語学会秋季大会発表賞

 

2016年度秋季大会(2016年10月29日・30日,山形大学)の研究発表を審査の結果,「該当者なし」となりました(2016年12月決定)。

2016年度日本語学会春季大会発表賞

 

2016年度春季大会(2016年5月14日・15日,学習院大学)の研究発表の中から,以下の2件が選考されました(2016年8月授賞発表決定)。

 

岡田一祐氏「『和翰名苑』における平仮名字体認識」

 

〔授賞理由〕

 本発表は平仮名の字体認識(字源別ではなく)をどのように客観化するかということについて、『和翰名苑』(滕孔栄編、明和6年(1768)版)を材料とした「『和翰名苑』仮名字体データベース」を構築し、『和翰名苑』の類似字形の分類の背後に字体認識があったこと、さらに字体認識には平仮名と草仮名の二階層のあることを明らかにしたものである。発表はポスター、パソコン(データベースの実演)、文献資料(発表者架蔵本)を上手く組み合わせ、聞き手の関心を強く惹きつけるものであった。データベースの構築を報告する発表は多いが、本発表はデータベースによって何ができるかではなく、データベースを研究ツールとして活用した結果、何がわかったかを報告したものであり、今後の平仮名の研究に資するところが大きい。またデータベースの使用方法と検索結果について、日本語と英語との二言語で記されていることは、平仮名・変体仮名に関心を持つ外国人研究者が少なくないことを考えれば、本研究の国際的な発展性は高いと言える。

 以上から、本発表を日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判定した。

 

 

高田智和氏・守岡知彦氏「CHISEによる漢字字体のデジタル記述―漢字字体規範史データベースを例として―」

 

〔授賞理由〕

 本発表は、漢字字体規範史データベース(http://www.joao-roiz.jp/HNG/)に収録された古典籍の漢字字体をデジタルで記述し、その字体情報をCHISE文字データベースに取り込み、「CHISE-IDS HNG 漢字検索」により、字体レベルでの漢字検索を可能にした研究報告である。今回、初唐宮廷写経2種(京都国立博物館蔵今西本妙法蓮華経巻第五、同博物館蔵守屋本妙法蓮華経巻第三)が CHISE文字データベースに取り込まれた。漢字字体は、UnicodeとIDSにより記述し、文字コードで表現できない漢字部品はグリフウィキに登録し記述している。CHISEは、「多粒度漢字構造モデル」と呼ばれる包摂粒度階層を設けた文字オントロジーで、複数の包摂関係を設けているため字体の構成要素での検索を可能にする。漢字字体規範史データベースの画像データを元に、近年発展著しい複数の漢字字体のデジタル記述法を活用し、次世代型データベースの構築を試みた意欲的な研究である。また、CHISEの「多粒度漢字構造モデル」は、様々な構成要素での検索を可能にしており、漢字字体の多様性に柔軟に対応している。現時点では部分的な公開だが、今後、漢字字体規範史データベース所収古典籍の字体がデジタル公開されると期待できる。本発表では、デジタル記述の概要が的確かつわかりやすく纏められ、質疑にも明解に対応していた。以上のことから、本発表を、日本語学会大会発表賞の授賞対象発表としてふさわしいものと判定した。

 

(2016年8月2日掲載)

2015年度日本語学会秋季大会発表賞

 

2015年度秋季大会(2015年10月31日・11月1日,山口大学)の研究発表の中から,以下の2件が選考されました(2015年12月授賞発表決定)。

 

川口敦子氏「天草版『平家物語』の注記記号が持つ意味」

 

〔授賞理由〕

  本発表は,ローマ字書き日本語のキリシタン版が日本語学習を目的として編纂されただけではなく,国字で書かれた日本語テキストをローマ字活版印刷でいかに実現するのかという印刷・出版技術の試み(「再現」)という性格を持っていたのではないかということを,天草版平家物語に見える注記記号(f 人。q 官。c 国。t 所。)と平家物語諸本に見える朱引の現れ方とを丁寧に比較しながら論証したものである。文献資料を用いた言語研究において,その文献資料の性格を見極めることは当然であるが,本発表では注記記号を手掛かりに,出版レベルにまで遡ってその性格の一端を解明したと言える。発展的な課題として,このような注記記号が中世ラテン語注釈文献に見える諸記号とどのように関わるのか,またテキスト内に注記記号を加えることが「読書行為」という観点からどのような意味を持つのかなど,訓点資料とも共通した課題があり,今後の研究が大いに期待される。

  本発表は,質疑応答でやや慎重に過ぎる態度も窺えたが,予稿の内容,見やすさ(フォントサイズ,文字間,行間,図表の配置など),発表時のスライドのまとめ方,声の大きさ,スピード,明瞭さなど,学会プレゼンテーションに要求される特徴からも申し分ない。発表者の今後の研究進展への期待に加え,若手会員の研究発表の見本として,「日本語学会大会発表賞」に相応しいものである。

 

 

原田走一郎氏「南琉球八重山黒島方言における二重有声摩擦音とその揺れ」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,南琉球八重山黒島方言に現われる二重有声摩擦音zz,vvとその変異(単音の有声摩擦音z,vと二重無声摩擦音ss,ff)を検討し,基底に二重有声摩擦音をたてることを提案したものである。

 発表者は語頭に二重有声摩擦音と単音の有声摩擦音の変異zza〜za:,zzu〜zu:を持つ語と単音の有声摩擦za:,zu:しか持たない語の複合語の後部要素の現われ方から,単音の有声摩擦音を基底にできないことを導く。さらに不規則変化に見える単音有声摩擦音を語頭に持つ動詞vu:(降る),vi:ru(くれる)も基底に二重摩擦音をたてることで規則動詞になることを提示した。Muller2001等の類型論から有声/無声の二重摩擦音を持つ18言語の類型論的傾向に照らした検討も行い,二重有声摩擦音を基底にすることの蓋然性の高さを導く。

 琉球諸語は日本祖語から分岐後激しい変化を遂げて現在に至っており,多様で複雑な言語現象を示す。発表者は語頭で二重有声摩擦音,複合語の語中で二重無声摩擦音という日本語方言としては特異な音韻現象を複数の観点(複合語規則,最小語制約,動詞形態規則等)から分析し,併せて類型論の成果が琉球諸語研究に有効であることを示して研究の可能性を広げている。今後の発展が期待される。予稿・口頭発表ともに論旨が論理的で明快である点および質疑に的確に応じた点も評価される。以上のことから,本発表は日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判断される。

 

(2015年12月11日掲載)

2015年度日本語学会春季大会発表賞

 

2015年度春季大会(2015年5月23・24日,関西学院大学)の研究発表の中から,以下の2件が選考されました(2015年6月授賞発表決定)。

 

○遠藤佳那子氏「黒川真頼の活用研究―ラ行変格活用を中心に―」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,幕末・明治時代の国学者黒川真頼(文政12-明治39,1829-1906)の手になる草稿「語学雑図」を紹介し,その活用研究の変遷を分析するとともに,学史上の再評価を試みたものである。

 発表者は,真頼の活用研究を時系列に沿って三期に整理し,当該資料の成立を,内部徴証に照らして,学説の大枠が固まる明治6年頃までの第一期と推定する。また,各期で扱いに最も変動のあったラ行変格活用に注目し,それが義門『詞の道しるべ』(文政7)の所説に多く拠っていること,承接関係に基づく「階」,用法を重視した「言」の,複数の枠組みによる分類がここで齟齬を来し,扱いが変遷したこと等を丹念に立証している。また,文部省編輯寮『語彙別記』(明治4)や大槻文彦『語法指南』(明治22)に影響を与えた可能性もあわせて指摘する。

 予稿集を読み上げつつパワーポイントを併用する発表は,小さな画像を適宜拡大する等の工夫もほしかったが,全体に明快で分かりやすかった。研究史に新たな知見を加える発表であり,今後の進展も期待される。

 以上のことから,本発表は日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判断される。

 

○坂喜美佳氏,佐藤亜実氏,内間早俊氏,小林隆氏「方言会話の記録に関する一つの試み」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,方言会話の記録方法として,言語行動の目的に応じた場面設定会話について提案するものである。網羅性に欠けるという従来の方法の問題点や,言語の構造面だけでなく運用面の研究が進んでいるという近年の研究動向をふまえ,収録地の言語生活の全体像を観察するという目標のもと,場面設定の具体案を提示,その有効性を宮城県沿岸部での実践から検証している。

 自由会話を主とする従来の記録が網羅性に欠けるという問題意識は,方言研究者に広く共有されてきたもので,その解決法を示した意義は大きい。提案された枠組みは,「要求表明系」「感情表明系」などの目的別言語行動の大分類,〈頼む〉〈困る〉などの下位分類ごとに,「荷物運びを頼む」「瓶の蓋が開かない」などの具体的場面を示すもので,体系的であるとともに,多くの人がその場面を想定しやすいよう練られている。発表では,実際の収録場面の動画を用い,実践上の工夫と課題も示された。この記録方法の有効性の検証は今後も必要だが,それを通して,方言研究の方法論の洗練のみならず,言語行動研究への貢献も期待できる。

 以上のことから,本発表は日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判断される。

 

(2015年7月4日掲載)

2014年度日本語学会秋季大会発表賞
  • 2014年度秋季大会(2014年10月18・19日,北海道大学)の研究発表の中から選考されました(2015年1月授賞発表決定)。

 

蛭沼芽衣氏「音訳真言のアクセント」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,密教儀式の次第を記した経典「儀軌」収載の漢字音訳真言に差された声点を対象として,それが示すアクセントの特徴について調査・考察したものである。具体的には,11・12世紀の天台宗系資料を扱い,それらでは,(1)声点の示す声調と,被差声字の中国中古音声調および梵語母音の長短とは対応関係がない,(2)梵語の語単位では一定の型が認められ,一種の語アクセントのようなものであったと推測される,(3)型の中では高平調が無標形式であり,低平調は特殊な音調を示す可能性がある,(4)去声点は重音節に差される,といったことが示されている。

 本邦梵語資料に対する音韻史的研究の必要性については,沼本克明氏「日本語史と悉曇学―訓点資料から見る―」(国語学会2000年度秋季大会公開講演会)などが主張されてきたところであったが,後継研究者の出現しない状況が続いてきた。本発表は,そうした状況を打破して,漸く研究史に新たな知見を加えるものであった。予稿・口頭発表ともに,その論旨が大変簡明である点も評価される。一方で,調査資料が所属大学所蔵のものに限られること,発表者自身も述べている通り,天台宗系の資料に限られ,真言宗系の資料が未調査であることなど,未だしのところはあったが,そうした諸点に関する調査の拡充も含め,今後の発展が期待される研究でもある。以上のことから,本発表は日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判断される。

 

藤本灯氏「『色葉字類抄』の分類意識―「人事」「辞字」部の動詞形項目の配置を中心に―」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,三巻本『色葉字類抄』の各音節排列内の下位分類基準のうち,「人事」「辞字」を取り上げ,それが内包する諸特徴について,悉皆的調査に基づき指摘したものである。具体的には,(1)「辞字」部は1例を除き単字を掲出するが,「人事」部には若干の熟字例を収載する,(2)動詞・形容詞・名詞は両部に収載されるが,形容動詞・副用語・付属語・代名詞・接尾語等は「辞字」部に偏る,(3)両部とも動詞・形容詞は終止形の掲出を基本とするが,動詞に関しては連用形での掲出も見られる,(4)一単語当たりの掲出字数は「辞字」部の方が多い,等といった諸点を確認している。

 本発表で着目されるのは,まずその調査の労力であり,示されたデータが今後研究者に共有されることの意味は大きいと考えられる。標題に示されながら,動詞項目の分類意識に対する考察は入り口を示すに留まっており『色葉字類抄』以外の同時代資料への言及もないこと,指摘された事象間の有機的連関への視点に乏しいこと等,今後の発展を待つべき点はあるが,基本データが完成されている以上,それも充分期待できる。以上のことから,本発表は日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判断される。

 

呂建輝氏「漢語連濁の史的変遷と意味用法の一側面について」

 

〔授賞理由〕

 本発表は,接辞的な漢語の連濁についての不規則性の要因を,産地を表す「~産」,書籍の分類を表す「~本」を例に,それらの史的変遷から明らかにしようとするものである。「~産」については,江戸時代後期以降,「子供を産む」意の「~産」は連濁し,それ以外は連濁しないという規則ができた。「産地」を意味する「~産」は後者を起源とするため連濁しない。「~本」については,手軽なイメージの書籍を表す意の「~本」は,江戸時代に前接要素にかかわらず連濁するようになった。書籍の分類を表す「~本」はこの用法から生まれたものであることから,連濁すると考えられる,と結論づける。

 連濁については,音環境をもとに共時的な規則の構築を目指す研究もあるが,本発表はいたずらに共時的規則を求めようとする方向はとらず,史的変遷から個別の事情を明らかにしようとするものであり,着実な方法をとるものである。発表も明快であり,質疑においては,連濁現象の有無の精細な確認,意味用法とのかかわり,半濁音の問題などについての質問・意見が出されたが,いずれに対しても丁寧に回答をし,生産的な議論を行った。また,このような方向での研究の展開も期待される。以上のことから,本発表は日本語学会大会発表賞にふさわしいものと判断される。

 

(2015年1月14日掲載)

Copyright © 2014 日本語学会 All Rights Reserved.